老舗ニュースサイトGIGAZINEの運営者である山崎恵人さんが2010年末ごろに書かれた本です。インターネット時代のメディアはどうなっていくの?という点について、希望に目を向けて語られていました。ここでは僕が気になったところだけ取り上げます。
総表現社会を実現させるものは?
総表現社会というのはウェブ進化論で語られていた、インターネット上で提供される安値で高品質なツールを素人が利用することができるようになり、それによって誰でも表現者になり、集合知が生まれていくというような社会です。しかしウェブ進化論の出版から3年後、著者の梅田望夫さんが日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞くというITmediaの記事で日本じゃそう上手くいかないみたいだね、と言ったニュアンスのことを漏らしているように、総表現社会の実現はそう簡単ではないし、ウェブ進化論から8年経った今でも、理想とはずいぶんとずれた方向へ進んでいる感じがします。
「GIGAZINE 未来への暴言」が面白かったのは、こうした総表現社会を実現するための手段が語られていたことです。それがフリーミアムモデルからの脱却、そしてパトロンモデルの構築です。
フリーミアムからパトロンへ
フリーミアムの限界
フリーミアムというのはフリーとプレミアムを合わせた言葉です。GIGAZINEのように広告で成り立っているメディアや、基本機能は無料で追加機能が有料というようなビジネスモデルのウェブサービスなどもこれに含まれます。ただ、ウェブ進化論の総表現社会を実現しようとすると、このモデルには問題があります。
しかしこの「フリー」、すなわち無料によって収益を得る戦略は絶対的に大多数のユーザーを常に集めなければ成立しないという特徴があり、上位数%しか長期的専業では成立しません。
個人がちょっと面白い漫画をネットにあげてページビューを稼いだところで、広告収益だけでは食っていけません。これでは結局、総表現社会なんて無理じゃないか、って話です。
パトロンモデル
忠誠度の高さ、ファンではなくパトロンとして支えるのだという意識の高さが今後のインターネットを支えていくはずです。
そこで出てくるのがパトロンモデルです。パトロンとは支援者という意味で、ざっくり言うと、支援者がしっかりお金を出すようになることで、広告に頼らない商売ができるようになるぜ、ということです。
ビジネスや表現をする側からしたら、そうしたパトロンがいないから困ってるんじゃないかという話です。しかし、ユーザーが金を出さないという話はこれからインターネットが当たり前の層が変えていくだろうというようなことを述べています。ココらへんがとても希望に満ちていますね。
今後、ユーザーから資金調達をする方法、ユーザーからダイレクトに収益を上げる方法として、金銭による対価という形以外での金銭の移動の発生、すなわちはるか昔の美術界の「パトロン」のように、コンテンツやサービスを提供する個人に対してリスペクトするという意味を込めて、お金を寄付する、すなわちただの消費者としてのファンではなく、存在を支えるためのパトロンとして立ち位置になりたいという人が増えてくるはずです。