旧gaaamiiのブログ

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「風をつかまえた少年」を読んだ感想

「風をつかまえた少年」という本を読みました。アフリカのマラウイという国で風車を作って自家発電を実現した少年の実話です。感動しました。

読んだ直後は本当に感動と興奮でやばくて、ひたすらカムクワンバさんすげーかっけーって感じなんですが、冷静になってみると、教育やモノづくりへの姿勢について考えさせられました。ここには、創造性を育んだのは学校教育じゃないということ、とにかく作ることの大事さについて、あとはカムクワンバさんの近況について書いておきます(ノンフィクションのいいところは、登場人物のその後がわかることですね)。

創造性を育んだのは学校教育じゃない

この本を読んで、教育が重要だと感じる人は多いはずです。僕も、カムクワンバさんがダートマス大学へ進学できたことは、とても素晴らしいことだと思います。マラウイを襲った飢饉によって一度は中学校を退学したカムクワンバさんでしたが、彼は農作業をしている時も風車を作っている間も復学を望んでいたようです。

しかし一方で、彼みたいな創造性が学校教育で育まれるかというと、うーんどうなんだろう...と考えてしまいます。学校教育をいくら強化しても、彼みたいな情熱と好奇心は作れるものではないような気がします。

彼は中学校を中退して以降、父親の農作業を手伝いながら図書館と廃品置場へ通い、風車をつくりあげましたが、この本では、廃品置き場へ向かうカムクワンバさんを教室の窓から囃し立てる生徒の姿が描かれています。教育を受けることができている生徒が、貧しさに負けずにひたむきに科学に取り組む同年代の少年をバカにするのです。そういった姿を見ていくと、彼を救ったのは学校ではなく図書館と、そこにあった情報だと感じました。風車は、彼が抱える問題に対して日夜取り組んだ結果だと思います。その結果に必要だったのは情熱と情報であって、学校教育ではありません。

とにかく作る

図書館と廃品置場を行き来して風車を作ったというと、天才少年があっというまに風車を作ったような印象を与えてしまいそうです。しかし、これにはとんでもない苦労が伴っています。なにせ、図書館に完全なレシピがあって、廃品置場にパーツが並べられていたわけではありません。時にはガンユ―(日雇い仕事)で稼いだお金で商人と取引したり、溶接工を説得して作業を手伝わせたり、そんなことを14才の少年がやってのけているのです。条件が揃っていなくても、とにかく作る。作るために必要なものがないといっても、諦めない。

彼は招待されたTEDトークの中で、カタコトの英語でこう言っています。

After I dropped out of school, I went to library, and I read a book that would -- "Using Energy," and I get information about doing the mill. And I tried, and I made it.

William Kamkwamba: ウィリアム・カンカンバの風車について | TED Talkwww.ted.com

カムクワンバさんの近況

探してみると、彼のブログが見つかりました(最後の更新は昨年の10月なので最新情報ではありませんが)。すでにMoving Windmills Project ファウンデーションという非営利組織を通じて、いろいろやってきたみたいです。中学校や高校にソーラーパネルを設置して、その電力によってコンピューターの導入を実現するなど。すげえ。

アメリカのダートマス大学を卒業してからは、母国マラウィで若者たちのためのインキュベーション施設の設立を考えていて、再生可能エネルギーへの関心も持ち続けているということが書かれています。

As I look into the future, I intend to return to Malawi and use the knowledge I have acquired through my studies and interactions to continue solving the problems facing people in the my community and Malawi in general. I would like to create an innovation center where students from different universities and high schools can work together to develop ideas that help solve problems that people face in different communities. Many young people are talented and have brilliant ideas, yet they don’t exploit the full potential of these ideas because of a dearth of organizations that can incubate them. In addition to establishing this innovation center, I also intend to continue working on renewable energies such as wind, solar, and biogas, based on my commitment to help people get the energy they need for daily use.


本書を読んで、自分がいかに言い訳をしながら作りたいものを諦めているか気付かされました。頭に思い描いたものが必要だと思うなら、ぐだぐだ言わずにまずは作るべきなのかもしれません。風車だろうがロケットだろうが、すでに誰かが作ったことあるんだから、自分にだけできないなんてことない。そう考えてみると、人生楽しくなりそうです。この本を書いてくれたカムクワンバさんとブライアン・ミーラーさんに感謝です。ほんとに読んでよかったです。

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